ストレッチ/ストレッチングとは
意味
ストレッチ(Stretch)とは、英語の『stretch』であり、その意味は対象を『伸ばす・広げる・伸張する』などで、いわゆる“ストレッチ体操”そのものを指す意味もある。身体活動におけるストレッチという概念は、1960年ごろからスポーツ科学の論文中などで使われはじめ、ボブ・アンダーソンの著した『STRETCHING』(1975年)の出版を期に1970年代後半より急速に広がっていったといわれている。このときボブ・アンダーソンが提唱した静的なストレッチ(スタティックストレッチング)は、現在でも広く一般的に用いられている。筋腱をストレッチすることを主たる目的として実施される運動や手技はストレッチング(Stretching)もしくは“ストレッチしている”と言い表され、このことは事実上その状態からして差し支えない。またそれ以外の活動においてもあらゆる身体運動は筋の収縮・伸張の組み合わせによって行われることから、状態としてのストレッチは大なり小なり常に存在しているといえる。
種類
ストレッチングの種類は、その伸張方法により大きく2種類に部類される。一つは静的なストレッチングであり、もう一つは動的なストレッチングである。その他様々なコンセプトに基づいておこなわれるストレッチングが提唱されている。一般的に、自身で行うストレッチングはセルフストレッチングと呼ばれ、実施に当たって第2者(パートナー、補助者、協力者)を必要として行われるストレッチングはパートナーストレッチングやペアストレッチングなどと呼ばれる。また、各種方法においてより効果的にストレッチングを行うために、様々な道具(ツール)を活用する方法もある。
⇒ダイナミックストレッチング
意味
ダイナミックストレッチング(Dynamic Stretching)とは、対象となる筋群の拮抗筋群を意識的に収縮させ、関節の曲げ伸ばしや回旋などといった関節運動を行うことで筋や腱を引き伸ばしたり、実際のスポーツあるいは運動を模した動作を取り入れることでそれぞれの動きに特異的な柔軟性を向上させたり、利用される筋群間の協調性を高めることなどを目的として行うストレッチ方法の一つである。
概要
ダイナミックストレッチングは、基本的に対象となる筋群への直接的な操作は行わず、その拮抗(作用を有する)筋群を積極的に収縮させる動作によって対象の筋群をストレッチしていこうとするものである。対象となる筋群の収縮時に起こる関節運動においては、その拮抗作用を有する筋群は機能的に伸張されていく関係にある。この時拮抗筋群の緊張が高い状態にあるとスムーズに伸張していくことが出来ず、結果として対象となる筋群の収縮による動作もスムーズに行われないことになるが、これを自然と成立させるために相反性神経支配と呼ばれる反射機構が働くことで、拮抗筋群の緊張(収縮)を抑制するな信号が送られる。その結果対象となる筋のスムーズな収縮による関節運動が行われる。このようなメカニズムを利用することで行われるダイナミックストレッチには、その方法的理由から特徴的な効果があることが知られている。
ダイナミックストレッチングの方法
ダイナミックストレッチングを正しく行うためには、まず対象となる筋の持つ作用(関節運動)とその拮抗筋を正しく理解することが重要となるが、簡単に行おうとする場合には、単にストレッチしたい筋肉と反対側(裏側)の位置にある筋に力を入れるような動作(収縮)を行うと良い。
⇒伸張反射
意味
伸張反射(しんちょうはんしゃ、Stretch Reflex)とは、脊髄反射の一つで、骨格筋が受動的に引き伸ばされると、その筋が収縮する現象。この収縮は、筋肉の伸展によって生ずる張力を、その筋肉の中にある筋紡錘が感受しておこるものである。とくに伸張反射は、重力に対抗して身体を支える筋(抗重力筋)に著明で、このことは動物の姿勢保持に重要な役割を演じていることを意味している。つまり、姿勢調節のための筋の長さを一定に保つ負帰還回路(negative feedback loop)の作用としての機能でもある。またこの反射は、過剰に伸ばされた筋肉が損傷を回避するために収縮するという、一種の防衛機能的側面も有する反射でもある。
ストレッチングおける伸張反射
ストレッチングにおいて伸張反射とは、簡単にいうと「ある筋が急に引き伸ばされると、それ以上筋が伸びてダメージを受けないよう、その筋を収縮させて保護しようとする反射」と言える。身近な伸張反射の例としては、膝蓋腱反射が挙げられるだろう。足裏が地面につかない状態で椅子などに座り、膝下の部分を叩くと反射的に大腿四頭筋が収縮し、膝が伸びる現象である。この現象をもう少し生理学的に説明すると以下のようなメカニズムとなっている。
①膝下(膝蓋腱)を叩くことにより大腿四頭筋が瞬間的に引き伸ばされた状態になる。
②筋内に存在する筋の伸び縮みを感知するセンサー(筋紡錘)が反応し急激に引き伸ばされたことを感知する
③センサーの反応は「Ⅰa」という神経線維を通って脊髄に伝わる
④その反応は脊髄にあるその筋を支配している神経(α運動神経)に収縮の命令を出す
⑤神経の命令に従って大腿四頭筋が収縮し膝が伸びる
重要
反動をつけてストレッチングを行うと急激に筋を伸ばしてしまうことになるため伸張反射が起こりやすく、結果として筋が収縮してしまう。そのため、筋の柔軟性を高める目的として行なうスタティックストレッチングの注意点として「反動をつけずゆっくり伸ばす」と説明されるわけである。
⇒相反性神経支配
意味
相反性神経支配(そうはんせいしんけいしはい、Reciprocal Innervation)とは、主働筋が収縮する際に拮抗筋を収縮させない(弛緩させる)命令が出されるというような、互いに拮抗しあう筋の活動を抑制するメカニズムのことである。相反性抑制ともいう。
ストレッチングおける相反性神経支配
相反性神経支配は、スポーツなどの現場ではダイナミックストレッチングの効果の生理学的根拠としてよく用いられる。ダイナミックストレッチングは、「力強い」や「精力的な」という意味のように、目的とする筋を力強く積極的に動かしながら(収縮させることで)ストレッチしていく方法といえる。
⇒自己抑制
意味
自己抑制(じこよくせい、Autogenetic Inhibition)とは、ゴルジ腱器官の張力を感知するセンサーからの神経伝達により、力を出した筋肉が損傷されないように(出力の)抑制の刺激が出されることにより主働筋が弛緩する神経反射メカニズムのことである。自原(性)抑制ともいう。